《膝・足の導引法》
2019-09-04
日用養生訓
~現代に活かす「養生訓」の教え~
《膝・足の導引法》
これから時期は、日に日に寒さも増していき、
膝関節痛、肩関節痛、股関節痛、腰痛など「関節痛」で悩まれる方が多くなります。
「関節痛」の予防として「足湯」や「薬湯風呂」などが効果がありますが、
自分でできる予防法として「導引法」という方法があります。
「養生訓」巻第五「五官」には「膝から足の導引法」が記されています。
「膝の下の、ふくらはぎの表と裏とを、
ひとの手をかりて何度もなでおろさせ、
さらに足の甲をなで、その後は足の裏を多くなでで、
足の十指を引っぱらせると、気を下し気が循環する。
自分でやるのはもっともよい。これはたしかに良法である。」
益軒先生が記した「膝から足の導引法」です。
益軒先生の解説を少し解説してみます。
「なでおろし」という表現がありますが、
実際には「なで、さすり」で行うことでいいでしょう。
行う際には、保湿クリームなどを使うとやりやすくなります。
これからの時期は皮膚も乾燥しますので、
皮膚の乾燥予防ともなります。
・膝下
:膝のお皿から脛(スネ)に沿って足首の付け根までを目安にしてください。
また、膝上(膝皿)の上も重要です。 この辺りも指で挟むように擦るといいでしょう。
慢性化した「膝痛」の場合、膝上の筋肉も緊張している場合が多くあります。
“膝裏”も重要です。膝裏には「委中(いちゅう)」というツボがあります。
「委中」は、腰痛、膝痛、肩こり、頭痛、背中痛にも効果のあるツボです。
“膝裏”は、膝を曲げて親指を当てるように持ち、中に押し込むように圧するといいでしょう。
・ふくらはぎの表と裏
:これは“ふくらはぎの内側”と“ふくらはぎの外側”のことですね。
内側は膝内側から下で、“内くるぶし”へ向かっての筋肉のふくらみを目安にするといいでしょう。
外側は膝外側から下で、“外くるぶし”へむかっての筋肉のスジを目安にするといいでしょう。
外側は、有名なツボである「足三里」のツボがあります。
「足三里」の少し外側には、筋肉の疲労を緩和させる「陽陵泉(ようりょうせん)」というツボがあります。
両方のツボの周囲を刺激することで、足腰の疲労緩和に有効です。
“ふくらはぎの内側”は、骨と筋肉の境目に親指をあてて、指圧することもいいでしょう。
・足の甲
:足の甲は、足首から足指に範囲を示しています。
日頃、ヒールなどを履かれる方は足首がかたくなりやすいのでよくさすりほぐしましょう。
足首のかたさは、「膝痛」「股関節痛」「腰痛」に大いに関係しています。
サスルのみならず、足首をよく回して柔らかくしてみましょう。
また、足首の裏は“土踏まず”になりますね。
“土踏まず”には、「湧泉(ゆうせん)」というツボがあります。
益軒先生は、この場所を「足心」といい、入眠前によくなでサスルことを薦めています。
・足指
:足指は、手の指と比較していつも靴下で覆われ、絞められています。
なので、足指はかたまりやすく、足指どうしが引っ付きやすくなります。
「足指を引っ張る」とは、足指のこりかたまりを予防することになります。
また、指の関節が緩むことで足は柔軟性を取戻し、
立った時に足指がしっかり地面を捉え立てるようになります。
また、足指の付け根には「八風(はっぷう)」というツボがあります。
この「八風穴」は、下半身の冷え(風寒邪)を取り除く効能があり、
足先の痛みやしびれ、膝痛、腰痛、浮腫み、などの改善に効果のあるツボです。
秋から冬にかけて気温が下がると、足の冷え、冷えのぼせ、を感じやすくなります。
日頃から「八風穴」を刺激して、足先・足指の循環をよくしておくことで予防になりまうす。
参考:
手にも「八邪」というツボがあります。
手の「八邪穴」は、手の痺れ、腕の怠さ、五十肩、四十肩、首こり、肩こりに有効です。
最近は、スマホやコンピューターを使われる方が多いので、手の指もこり固まっている人が
多いと思います。
下半身の不快症状の改善には「八風穴」
上半身の不快症状の改善には「八邪穴」です。
《導引・按摩を控えるとき》
日々の養生として「導引法」はおススメですが、
益軒先生は、このような時は控えるように記されています。
「気がよく循環して快適なときは、導引や按摩をしてはいけない。
また冬期の按摩はよくないことが『内経』に書かれている。
身体を動かして気が上る病気(血圧、心臓病など)には導引も按摩もともによくない。
ただし、身体を静かに動かし歩行運動くらいならば四季を問わずによい。
食後に行なうのがよい。
湧泉の穴(足心)を撫でることもまた同様に四季を問わずいつでもよい。」
日頃から体調もよく快適な時は、無理に導引や按摩は必要ない。
と言われています。
「内経」に冬の時期の按摩は良くない。と書かれているということですが、
冬の間は、運動なので汗を沢山かくことはよくありません。
汗腺を開き、汗を洩らすことで、風邪を受けやすくなるからです。
冬の間は、陽気を洩らさず、体内に保持しておくことが養生では大事だということです。
また、日頃から高血圧やイライラしている場合に無理に血行を良くしすぎると、
余計に気がのぼせてしまうので注意せよ。ということだと思います。
しかし、軽く身体を動かして循環を安定させることは四季を通じて健康にいい記されています。
「湧泉」(足裏)という経穴は気持ちを落ち着かせてくれ、
快適な睡眠を得れる養生法として日々行うことはいいと言われています。
導引を行う場合は、常に呼吸を意識して行うと効果があがります。
ゆっくりと、大きく呼吸をしながら導引を実践してみてください。